ステーブルコイン発行大手のテザー社は6日、金連動型トークン「テザーゴールド(XAUT)」の新しい単位「Scudo(スクード)」を導入した。1 Scudo は XAUTの1000分の1に相当し、金1トロイオンスを1000分割した単位で取引できる。少額での金取引を実用的にする狙いがある。
XAUTは物理的な金1トロイオンス(約31.1グラム)に裏付けられたステーブルコインで、1 XAUTは金価格に連動して推移する。7日時点の金価格は1トロイオンスあたり約4,465ドル(約69.8万円)で、1 XAUTも同等の価値を持つ。このため、少額取引には不便だった。
Scudoの導入により、1 Scudo = 約4.46ドル(約698円)での取引が可能になる。テザー社は公式X(旧Twitter)アカウントで「Scudoはシンプルで直感的な単位で、XAUTの使用・追跡・取引を容易にする」と説明した。
XAUTはイーサリアム
ETHやトロン
TRXなどのブロックチェーン上で発行され、保有者はスイスの金庫に保管された物理的な金の所有権を持つ。Scudoは新しいトークンではなく、既存のXAUTを表示する際の単位変更にすぎない。ウォレットやDEX(分散型取引所)でScudo単位での表示・取引が今後対応される見込みだ。
暗号資産市場では、金連動型トークンは価格変動リスクを回避する手段として一定の需要がある。PAXGold
PAXGなどの競合も存在するが、XAUTはテザー社のブランド力と流動性で市場シェアを拡大している。
Scudoの導入は、単なる単位変更以上の戦略的意図を持つ。4,465ドルのXAUTは「高額商品」に見えるが、約700円のScudoは「手軽」に感じる。株式分割と同じ心理効果を狙った施策だ。実際の価値は変わらないが、小口投資家への訴求力は上がる。
テザー社は「決済インフラ」としての可能性を強調しているが、金価格は1日で2〜3%変動する。日常決済には不安定すぎる水準だ。店舗が「今日のScudo価格」を毎日調整するのは現実的ではなく、むしろ「少額投資の入り口」としての機能が本質といえる。
テザー社の本当の狙いは市場シェア拡大だろう。PAXGoldやDigix Goldとの競争で差別化が必要な中、「使いやすさ」を前面に出すことで新規ユーザーを獲得する戦略だ。決済インフラ化は長期的な野望だが、短期的には投資商品としての普及が目的と見られる。
地政学的な意義も指摘されるが、過大評価されがちだ。確かに金は政治的に中立だが、ブロックチェーン上のトークンは結局インターネットと取引所に依存する。制裁下の国では、インフラへのアクセス自体が制限される。実際の利用者は「ドル代替」よりも「資産分散」目的が大半になると予想される。Scudoは革命的というより、マーケティング的に優れた改良といえるだろう。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=156.4円)


