米大手資産運用会社Fidelity Investments(フィデリティ・インベストメンツ)は、同社初となるステーブルコイン「Fidelity Digital Dollar(フィデリティ・デジタル・ドル:FIDD)」を立ち上げると発表した。
FIDDは、フィデリティのデジタル資産部門であるFidelity Digital Assets, National Association(フィデリティ・デジタル・アセッツ・ナショナル・アソシエーション)が発行主体となり、今後数週間以内に個人投資家および機関投資家向けに提供される予定だ。
FIDDは、1トークン=1米ドルでの購入・償還が可能な、米ドル連動型のデジタル資産として設計されている。フィデリティは、長年培ってきた資産運用のノウハウと、デジタル資産分野での専門性を生かし、安定性と実用性を兼ね備えた「デジタルドル」の提供を目指す。
フィデリティ・デジタル・アセッツの社長であるMike O’Reilly(マイク・オライリー)氏は、「フィデリティはデジタル資産エコシステムが持つ変革力を長年信じ、ステーブルコインの利点について研究と提唱を続けてきた」とコメントした。
FIDDは、ブロックチェーン技術とデジタル資産の利点を活用しつつ、米ドルの安定性と信頼性を組み合わせたステーブルコインとして位置付けられる。
運営面では、フィデリティ・デジタル・アセッツが提供する機関投資家水準のセキュリティと、10年以上にわたるデジタル資産研究・開発の成果が基盤となる。単なるトークン発行にとどまらず、フィデリティグループ全体の機能を活用した「フルサービス型ステーブルコインモデル」を採用する点が特徴だ。
具体的には、準備資産の管理をFidelity Management & Research Company LLC(フィデリティ・マネジメント・アンド・リサーチ・カンパニー)が担当し、同社の長年の資産運用実績を生かす。
また、FIDDはフィデリティ・デジタル・アセッツ、Fidelity Crypto(フィデリティ・クリプト)、Fidelity Crypto for Wealth Managers(フィデリティ・クリプト・フォー・ウェルス・マネージャーズ)といったプラットフォーム上で、1ドルでの購入・償還が可能となる。
さらに、上場先となる主要取引所でも購入でき、保有者はイーサリアムメインネット上の任意のアドレスへFIDDを送付することができる。
透明性の確保も重視されており、FIDDの流通量および準備資産の純資産価値(NAV)は、毎営業日の終了時点でフィデリティの公式サイト上に開示される予定だ。これは、ステーブルコインに対する信頼性を高めるための重要な要素として位置付けられている。
フィデリティがこのタイミングでステーブルコインを発行する背景には、市場環境と規制の変化がある。
現在、ステーブルコイン市場の時価総額は3160億ドル(約48兆円、1ドル=153円換算)超に達しており、加えて米国では決済型ステーブルコインに関する明確な規制枠組みが整備された。
オライリー氏は、GENIUS Act(ジーニアス法)の成立について「業界にとって重要な節目であり、規制の明確化が進んだ」と評価し、こうした環境下で法定通貨担保型ステーブルコインを提供できることに意義があると述べている。
フィデリティは、2014年以降デジタル資産分野に継続的に取り組んできた企業でもある。リサーチ、取引、カストディ、投資商品といった分野で、伝統資産と同等のインフラを構築することを目指し、機関投資家から個人投資家まで幅広い顧客層に選択肢を提供してきた。FIDDのローンチは、その取り組みの延長線上に位置付けられる。
|文・編集:Shoko Galaviz
|画像:Shutterstock
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