● 複合的なマクロ・地政学リスクが重なり、ビットコインはストレス下で調整が進んだ。
● 政府閉鎖リスク再燃と米国発フロー悪化が下落を主導した。
● 現時点は調整局面だが、フロー安定で見方は変わり得る。

現在のビットコイン市場は、上昇トレンド後半から調整局面へ移行する過渡期に位置づけられる。中長期の構造が直ちに崩れたとは言えない一方で、短期的には需給とフロー主導で不安定性が高まりやすいフェーズに入っている。

本日の大きな下落は、単一要因で説明できるものではない。マクロ主導のリスクオフ、AI投資への不安(米大手テック企業の決算を背景としたセンチメント悪化)、米国とイランを巡る地政学リスク、米国政府閉鎖リスクの再燃、株式・商品といった伝統資産の同時下落、暗号資産市場特有の流動性不足、そして過剰レバレッジの一斉解消が、同時に重なった結果と整理できる。市場全体としては、いわばストレステストの一日であった。

これらの要因が同時に発生すると、ビットコイン市場では下方向への圧力が増幅されやすい。マクロ不安が高まる局面では、投資家はリスク総量の圧縮を優先し、流動性が高く24時間取引が可能なビットコインはポジション調整の対象になりやすい。また、政府閉鎖リスクや地政学リスクが重なることで将来の見通しが立ちにくくなり、積極的なリスクテイクが抑制される。加えて、暗号資産市場は流動性が限定的で、レバレッジが積み上がった状態では、初動の下落が清算を誘発し、価格変動を増幅させやすい構造にある。今回の下落も、こうした構造的要因が同時に作用した結果と考えられる。

中でも影響が大きいのは、米国政府閉鎖の可能性が再び意識された点である。過去4年間を振り返ると、政府閉鎖リスクが常にビットコイン価格に大きな影響を与えてきたわけではない。しかし、2025年10月に実際に発生した政府閉鎖局面では、閉鎖の長期化とともにリスクオフが優勢となり、市場全体に大きな調整圧力がかかった。この記憶は市場参加者の中で強く残っており、今回も同様の不安が先行しやすい状況にある。

添付のオンチェーンデータを見ると、特にCoinbase Premium Indexの低下が顕著である。これは、米国市場における動揺が大きく、米系投資家主導で売却圧力が強まったことを示唆している。グローバルに一斉の売りが出たというより、米国発のセンチメント悪化とポジション調整が価格形成を主導した構図と解釈できる。

また、デリバティブ市場では短期レバレッジが積み上がっていた局面であり、初動の下落が清算を誘発し、需給をさらに悪化させる連鎖が確認された。暗号資産市場では、このような局面で価格変動が増幅されやすい。

一方で、反対シナリオも考慮する必要がある。政府閉鎖リスクが具体化せず、マクロ環境が早期に落ち着く場合、今回の下落は一時的なストレス反応にとどまる可能性がある。Coinbase Premiumの回復、現物主導の買いフローの再開、清算圧力の沈静化が同時に確認される場合には、現時点の見方は修正が必要となる。

現時点では、複数の外生リスクが重なったことによる調整フェーズがベースシナリオである。ただし、米国政府閉鎖リスクの後退と米国発フローの安定が確認される場合、この見方は見直す必要がある。

オンチェーン指標の見方

Coinbase Premium Index:米国のCoinbaseと海外取引所のビットコイン価格差を示す指標である。プラスは米国投資家の買い需要が強い状態、低下やマイナスは米国側の需要後退や売り優勢を示す。急低下する局面では、下落の主因が米国発のセンチメント悪化にある可能性が高い。

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