暗号資産(仮想通貨)取引所Gemini(ジェミナイ)は、「Gemini 2.0」と題した公式ブログ投稿の中で、事業戦略の大きな転換を明らかにした。その中核にあるのが、英国、EU、オーストラリア市場からの撤退と、予測市場への経営資源集中という二つの決断だ。
これは一時的な後退ではなく、同社が掲げる次の成長フェーズに向けた「集中戦略」の中核に位置づけられている。
グローバル展開の限界を認めた判断
ジェミナイは2015年に米国で創業して以来、60以上の国と地域へと事業を拡大してきた。しかしブログでは、海外市場、とりわけ英国、EU、オーストラリアにおいては、勝利を収めることが難しかったと率直に認めている。
理由として挙げられているのは、以下のような構造的課題だ。
- 規制環境の複雑さと不確実性
- 市場ごとに異なる運営要件による組織・オペレーションの肥大化
- 投下コストに見合う需要が得られない現実
これらが積み重なった結果、ジェミナイは「組織が引き伸ばされ、コスト構造が重くなり、意思決定と実行のスピードが落ちている」状態に陥っていたという。
「世界中」より「勝てる場所」を選ぶ
ジェミナイはブログの中で、「アメリカには世界で最も優れた資本市場があり、ジェミナイにとって常に最重要の場所だった」と明言している。
英国、EU、オーストラリアからの撤退により、同社は以下を目指すとしている。
- 組織とオペレーションの簡素化
- コスト削減と収益性の改善
- 米国市場でのプロダクト開発と成長速度の加速
地域撤退は、人員削減とセットで進められている。
ジェミナイは2022年に約1100人いた従業員数を、2025年末までに約半分に縮小し、さらに約25%の追加削減を実施するとした。
この背景にあるのが、AIの本格活用だ。
ジェミナイは、AIによってエンジニアや非エンジニアの生産性が桁違いに向上したとし、「小さく、速く、鋭い組織」こそが最適解だと結論づけている。
海外市場からの撤退は、このスリム化戦略を実行するうえで不可欠だった。複数地域にまたがる規制対応、カスタマーサポート、法務・コンプライアンス体制は、人員とコストを大きく消耗するためである。
すでに動き始めているGemini Predictions
ジェミナイ2.0の最大の特徴は、予測市場を将来の中核事業と位置づけている点にある。
ブログでジェミナイは、「予測市場は、今日の資本市場と同じか、それ以上に大きくなる可能性がある」と、力強く主張している。
予測市場は、選挙、経済指標、社会的事象など、将来の出来事について人々が取引を行い、その価格が「集合知としての確率」を示す市場だ。
ジェミナイはすでに、Gemini Predictions(ジェミナイ・プレディクションズ)という予測市場プロダクトを立ち上げている。
2025年12月中旬のローンチ以降、1万人以上のユーザーが参加、取引総額は2400万ドル(約38億円、1ドル=157円換算)超という初期実績を示しており、同社はこれを「非常に強いトラクション」と評価している。
ここで重要なのは、地域撤退と予測市場集中が同じ戦略線上にあるという点だ。
予測市場は、
- 規制との対話
- 市場設計
- 流動性の集中
- プロダクト改善の高速サイクル
が不可欠な分野であり、経営資源を分散させたまま成功できるものではない。
ジェミナイは、英国・EU・オーストラリアという複雑で需要が限定的な市場から撤退することで、米国市場において予測市場を主役に押し上げるための余裕を確保した。
ブログでも、「予測市場で成功するためには、集中が必要だ」と明言し、すべての市場に存在するよりも、最も重要な市場で勝つことを優先する姿勢を明らかにしている。
再集中の始まり
ジェミナイは今回の決断を、「簡素化→ 統合→ 加速」という三段階のプロセスとして説明している。
- 簡素化:英国・EU・オーストラリアから撤退し、組織と事業領域を単純化
- 統合:米国市場にリソースを集約
- 加速:AIと予測市場を軸に、プロダクトと収益性を加速
撤退は守りではなく、次の成長に向けた準備段階という位置づけだ。
同社は今後、米国市場において予測市場を中核とした「スーパーアプリ」構想を推進し、収益性とスピードの両立を狙う。
|文・編集:Shoko Galaviz
|画像:Shutterstock
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