米連邦準備制度理事会(FRB)のクリストファー・ウォラー(Christopher Waller)理事が、年内にも「スキニーマスターアカウント(skinny master account)」と呼ばれる簡易版のFRB口座制度を導入する意向を示したと、複数の海外メディアが2月9日に報じた。
報道によれば、ウォラー理事はグローバル・インターディペンデンス・センター(Global Interdependence Center)主催のイベントで講演し、「調整がうまく進めば、年末までに実現させたい」と述べたという。
FRBのマスターアカウントは、金融機関が連邦準備制度の決済システムに直接アクセスできる口座であり、米ドル決済インフラへの最上流の接続手段とされる。一方、今回検討されている簡易版のマスターアカウントは、残高への利息付与が行われないほか、FRBの貸し出し窓口(ディスカウントウィンドウ)へのアクセスが認められないなど、機能を限定した設計となる見通しだ。
またFRBは、スキニーマスターアカウントに関し、夜間残高の上限を5億ドル、もしくは総資産の10%のいずれか低い方に設定することを検討している。
この提案は、ウォラー理事が2025年10月に初めて提示したもので、金融イノベーションの進展を踏まえつつ、リスクを抑制しながら金融機関の特性に応じたカスタマイズ型のアプローチを提供する狙いがある。従来のマスターアカウントは、金融機関にFRBの決済インフラへの直接接続を提供する一方、これを持たない金融機関は、決済や資金管理において提携銀行に依存せざるを得ない状況が続いており、こうした構造がフィンテック企業や暗号資産関連事業者の参入障壁となってきた。
この制度をめぐっては、暗号資産関連企業などの非伝統的金融事業者に決済インフラへの接続を認めるかどうかを巡り、コミュニティバンクとの間で意見の対立が表面化している。FRBが実施していたコメント募集は2月6日に締め切られ、今後は寄せられた意見を踏まえた検討が進められる見通しだ。
ウォラー理事は同時に、暗号資産市場の足元の低迷についても言及した。同氏は、ドナルド・トランプ大統領が2025年に就任したことで生まれた市場の高揚感が、現在は薄れつつあるとの認識を示した。
「儲かることもあれば、損をすることもある。それがこの分野の性質だ」と述べ、現政権発足時に高まった暗号資産市場への期待が後退しているとの見方を示した。
ビットコインは2025年10月に約12万6,000ドルで史上最高値を記録したものの、その後は下落し、現在は約7万ドル前後で推移している。
また、米議会では暗号資産市場全体を規制する市場構造法案の審議が難航している。このいわゆるクラリティ法案(Clarity Act)は、暗号資産取引所や分散型金融(DeFi)に対する規制枠組みを定めるとともに、商品先物取引委員会(CFTC)と証券取引委員会(SEC)の権限分担を明確化することを目的としている。
下院では法案が可決されたものの、上院では民主党の支持を得られず停滞している。さらに、コインベース(Coinbase)がステーブルコイン報酬の扱いを巡る対立を理由に支持を撤回するなど、調整は難航している状況だ。
ウォラー理事は、この法案について「議会で行き詰まっているように見える」と述べ、「それが暗号資産市場の混乱の一因になっている」と指摘した。
FRBは近年、銀行による暗号資産やトークン関連活動に対して慎重な姿勢を示してきたが、2025年に入り、関連ガイダンスの撤回や特別監視プログラムの終了を相次いで発表している。FRBは2025年8月15日、暗号資産やフィンテック関連業務を行う銀行を対象としていた監督プログラムを終了すると発表した。同プログラムは2023年8月に導入されたもので、銀行の安全性・健全性に新たなリスクが生じる可能性があるとの懸念を背景としていたが、終了により今後は通常の監督プロセスに戻されることになる。
参考:報道
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